階段上り下りどっちがいい?ダイエット効果やカロリー計算の方法を専門家が解説

階段を下る二人組 スポーツニュース
階段でしゃべる人

私は普段はリハビリの仕事をしていて多くの人の運動にかかわっています。

そんな中で患者さんの質問とかでも聞かれることがあるのですが、今日は階段の上り下りについてお話します。

階段の上りはしんどい、下りは楽、といったぐらいの印象でしょうか?

実際消費カロリーが多いのはどっち?と聞かれると「上り」ということになりますが、事はそう単純ではありません。

目的によっては下りのほうがトレーニング的に有効な場合もあります。

大事なのは「この人は登りがいいかなあ」とか「この人は膝が悪いから下りはやめとこう」など、その人その人によるということに尽きるかな、と思います。

何も定義せず下りのほうがいいって言ってるテレビ番組や人もいますが…個人的にはどっちがいいってことはなく、トレーニングの目的やその人が持つ背景で変わってくる、ということになると思います。

例えば下りのほうが筋トレに有効だとしても、すでに関節が悪くなってしまっている人の場合は痛みを誘発してしまうリスクもある、とかですね

今回は階段の上り下りでの消費カロリーの差や効果的な運動方法もお伝えしていきます。

結構細かいことも書いているので、細かいことはいいや、って人は最後のまとめを読んでください。

この記事でわかること
  • 階段2~3階分(約60段・1分とした)のカロリー計算方法
  • 簡単に計算できるカロリー計算表
  • 階段の上りと下りの違い
  • 階段を利用したダイエットとは

メッツ(METS)を使った階段上り下りのカロリー計算の例

日常的に行われる多くの運動にMETs(Metabolic Equivalent of Task)という運動強度の単位が設けられており

これを使用し時間当たりのカロリー計算をするのが一般的です

✔ 下記に簡単に計算できる表を入れています
  詳しい説明はその下にあります

カロリー消費計算器

カロリー消費計算器

階段をゆっくり上る



階段を早く上る



階段を下る



METs(Metabolic Equivalent of Task)は、特定の活動が消費するエネルギーの量を表す単位で、1 METは、安静時のエネルギー消費量(つまり、何もしないで座っている状態)を表します。

カロリー消費量を計算するための一般的な式は次の通りです

C(カロリー)=METs×体重(kg)×時間(hours)×1.05

ここで

  • C はカロリー消費量(kcal)
  • METs は活動のMET値
  • 体重 は体重(kg)
  • 時間 は活動時間(時間)
  • 1.05 は換算係数(kcal/kg/hour)

したがって、体重が50kgの人が1分間で消費するカロリーは次のように計算できます
階段は1段が20㎝前後、ゆっくり上るで1段/1秒ぐらいとされているので約60段(2階~3階)相当と思われます

おおよそのメッツは決まっているためここでは上記した

  • 階段を降りる…3.5メッツ
  • 階段をゆっくり上る…4.0メッツ
  • 階段を早く上る…8.8メッツの値を使用して計算していきます。
  • 階段を降りる場合

C=3.5METs×50kg×(1/60)hours×1.05=3.0625kcal

  • 階段をゆっくり上る場合(階段60段程度・2~3階を想定)

C=4.0METs×50kg×(1/60)hours×1.05=3.5kcal

  • 階段を早く上る場合

C=8.8METs×50kg×(1/60)hours×1.05=7.7kcal

階段上り1分間あたりの消費カロリー(体重50キロ・階段60段程度・2~3階を想定)

  • 階段を降りる場合約3kカロリー
  • 階段をゆっくり上る場合約3.5kカロリー
  • 階段を早く上る場合訳7.7kカロリー

この計算式は理想的な状況を想定しています。実際のカロリー消費量は、個々の身体の効率、階段の傾斜、歩く速度など、さまざまな要素によって異なります。また、この計算式はエネルギーの保存の法則に基づいていますが、人間の身体は完全に効率的な機械ではないため、実際のカロリー消費量はこの計算結果よりも大きくなる可能性があります。この計算式はあくまで参考の一で具体的なカロリー消費量を知りたい場合は、医療専門家やフィットネス専門家に相談することをお勧めします。

階段の上り下りの違い

まずは階段の上り下りで何が変わってくるのか?

具体的には

  • 筋肉の使い方が違う!同じ筋肉でも登りと下りで違う
  • 高さが変わっていくので位置エネルギーが変わってくる(物理…苦手)重力がかかる分違うって感じでしょうか

筋肉の使い方の違い

じゃあ具体的にどう違うのか

階段上りの場合

基本的には1段上に挙げるほうの足の股関節と膝関節が曲がって、それに伴い膝を伸ばす【大腿四頭筋】と股関節を伸ばす【大殿筋】が縮む力で体を上方に押し上げる。

ちなみに膝は曲がった状態から伸びるが【大腿四頭筋】は縮んでいっている。このことを求心性収縮・短縮性収縮などといいます。イメージしにくいかもね…あんまり気にしなくてもいいかも

ちなみに言い出すときりがないので足関節や、体幹、バランスなどの小難しい話は置いときます

自分の体をより高い位置に上げ、さらにそれには重力もかかってくるため上りのほうが消費カロリーは多くなっています。

上りで息切れしやすいのは消費エネルギーが多いからで、筋肉痛がひどい時なんかは下りのほうがつらいはず

簡易な単位としてメッツ(METS)という単位が使われます。

ちなみにメッツとは身体活動の単位で安静に座っている状態を1メッツとしています

このように体全体が使用するエネルギーとしては階段の上りのほうが大きいということがわかります

階段下りの場合

階段下りの場合は上りと違い縮んでいくのではなく、ゆっくり伸びていくといった感じ。

実際階段を下りてみるとわかりやすい

片方の足を下におろすと下ろすまでの間、後ろに残った足の膝がゆっくり曲がっていくと思う。これは先ほどの【大腿四頭筋】がゆっくり伸びていっている状態。ブレーキをかけているといった感じか

これを遠心性収縮・伸張性収縮などと言ったりします。

ちなみに下りの時の筋肉の収縮様式のほうが負担が筋肉に対しての負荷が大きく、これが下りのほうが筋トレになるといわれるゆえんです。
またこれに位置エネルギーや重力もかかるのでより筋肉や関節には負担がかかるといえるでしょう。

ゆっくり降りると後ろに残った足に、早くジャンプするように降りると前にある足に負担がかかる。

膝関節痛などがある人はゆっくり降りることで膝の負担を減らせる。

ただ~考え方を変えると骨はストレス(荷重や衝撃)がかかると強くなる性質があるので、下りは理論的には骨も強くするともいえる。

ちなみに骨に負担がかかりすぎると骨棘という関節痛の原因となりうる骨の変形となる可能性もある。

ここでは上りに比べると、より下りのほうが衝撃が多いという意味で、上りは骨に全くストレスがかからないという意味ではないです

これらを踏まえたダイエットとは?

体重を減らそうと思ったら病的なものを除き絶対的な条件は一つ

  • 摂取カロリーを消費カロリーが上回る

ということである

消費カロリーとは運動で余分に使用するものに加え生きているだけで(呼吸をして心臓が動いているだけで勝手に使用する)基礎代謝分もあり

  • 基礎代謝は 成人男性で約1500kカロリー     
          成人女性で約1150kカロリー
  • 基本は年齢が上がれば下がり、体温や筋肉量など様々な要素で変わるのでおおよその数値となります

基礎代謝分も踏まえ、大前提を満たそうと思った場合

  1. 摂取カロリーの制限(食べるものの制限)
  2. 消費カロリーを増やす(上記で説明したような運動でカロリーを使う)
  3. 基礎代謝の向上(簡単に筋肉を増やす)筋肉はあるだけでカロリーを使用する

などが考えられます。

ただしおすすめしないのは1番の食事制限だけを行う場合

あまり食事制限しすぎると筋肉のタンパク質をも切り崩してしまい筋肉量が減ってしまいます。

                    ⇓

筋肉量が減ると結果基礎代謝が低下することでリバウンドしやすくなる、というダイエットにおける王道の失敗パターンになってしまいます。

階段の上り下りは定期的なカロリー消費+筋トレにもなるので

結果基礎代謝も向上して痩せやすい体作りになる

これがダイエット成功の王道パターンといえるでしょう

残念ながらダイエットに近道はない

階段上り下りまとめ

まとめると

  • 上りのほうが単純に同じ運動時間ならカロリー消費が大きい
  • もちろん下り階段を徹底して筋トレとして行い、筋肉量が増えれば基礎代謝が増えるということにはなる
  • 下りは遠心性収縮でより筋トレになるが関節や骨の負担も大きい
  • どっちがいいってことではなく目的によって選ぼう(なんでもそうだがトレーニングは自分に合ったものを選ぼう。)
  • 階段はめちゃくちゃいい運動になるのでぜひ使おう(両方やればオールOK)
  • 小泉元総理は必ず階段を使っていたらしい(確かにほっそりしてかっこいいイメージ)

と、こんなところでしょうか?

少しは皆様のお役に立てたでしょうか?

自分が何でそのトレーニングをするのかってことを理解しているか、していないかは大事だと思います